ただひたすら一生懸命に彫る

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    自分の纏う空気がピリピリしているなぁと思う。

     

    今、香合仏を彫っている。

     

    白生地で包まれた仏さまを手の中に

    3厘や5厘の彫刻刀で

    何日もかけて彫り進んでいく。

     

     

    仏さまの仕事をしている間は、

    何をやってても緊張している。

     

    洗濯干してても、ご飯作ってても、

    どこにいて何をしていても「今、仏さん彫ってるんや」ということが頭から抜けない。

    常に緊張状態。

    気持ちも身体も持たへんから、年に1、2体しかお作り出来ない。

     

     

    私は父のように、

    何百体もの仏さまを彫ってきたわけではない。

    持っている技術力も、

    父には到底かなわない。

    いつもそう思っている。

     

     

    でも、娘が言うてくれた。

     

    「お母さんの仏さんが欲しいひとは、お母さんの仏さんやないとあかんのやで」

     

     

    それは作り手としてとても幸せなことであり、とても苦しいことでもあると思う。

    だからいつも、あがきながら、

    今の自分に出来る精一杯のことをする。

     

    研ぎも、彫りも。

     

    もっと上手くなりたいよなぁと思いながら。

     

    「一生勉強や」

    父の言葉を思い出しながら、

    苦しくて、でも楽しくて

    なんとも言えない時間を過ごす。

     

     

    待っていてくれてはる方が

    その手の中でそっと蓋を開けはったときに、

    微笑んでくれはるように、

    そのお顔が見られるように、

     

    願いながら、ただひたすらに。

     

     

     

     

     


    ひとつひとつ、ただひとりの方のために

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      お地蔵さんが仕上がったとき、いつも娘に見てもらう。

       

      1体1体それぞれに、

      「可愛らしいお顔やなぁ」とか、

      「えらい細いお地蔵さんやなぁ」とか、

      自分の思うところはあるけれど

      お客様にお渡しするときに、それを口にすることはない。

       

      見るひとによって、感じ方は違うから。

      先に私がそう言ってしまうと、

      そういう先入観で見てしまわはるかもしれへんから。

       

      個展用のときは、

      「どんなひとが待っててくれてはるんやろうなぁ」

      と思いながら彫っているし、

      注文のときは、

      やり取りしたメールを読み返してから彫り始めるようにしたりして、

      どちらのときも「そのひとだけの仏さん」にならはることを意識して仕事を進める。

       

      だからああやこうや言い合うのは娘とだけ。

      私が思ってることと娘が感じることでも、すでに違うし。

      で、二人で順番にお地蔵さんをなでなでして、

      「いってらっしゃい」

      「仲良く暮らすんやで〜」

      と声をかける。

      それから、

      袋に入れて箱に入れて、送り出す準備に入る。

       

       

      今までどれだけ、そうやって送り出してきたんやろう?

      これからどれくらい、同じように送り出していけるんやろう?

       

      無事に送り出して、

      喜んでおられるのを見て安堵して、

      また次に取りかかる。

       

      生きてる限りその繰り返し。

       

      気持ち研ぎ澄まして。

       

       

       

       


      心静かに、ただひとりで

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        仕事部屋には、荒彫りのお地蔵さんがいつも数体並んでいる。

         

        次に取りかかるお客様の名前を心の中でつぶやいて、

        お地蔵さん達を眺める。

        そして「このコや!」と思った木に手を伸ばす。

         

         

        どんなお顔にならはるんやろう?

         

        蓮台の丸を整えて、

        袖と手を彫り込んで。

         

        時々離れた所に置いてバランスを見ながら、少しずつ彫り進んでいく。

         

         

        家にこもって

        ただひたすら、

        木と道具と向き合う時間。

         

        気持ちの糸を張りつめて、

        その糸が切れてしまう1歩手前まで自分を追い込んで。

         

         

        しばらくは、そんな時間が続きます。

         

        もう少し待っていてくださいね。

         

         


        木とハイタッチ

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          蒸し暑く、早くも熱中症になりそうな毎日ですね。

           

          制作、ご連絡、発送と、日々頑張っています。

           

           

          電話をかけるのはやっぱり苦手でしんどい作業ですが、

          「楽しみに待っていました!」

          と言っていただくと気持ちも和みます。

          また、お礼のメールや手紙も励みになります。

          ありがとうございます。

           

           

          私は箱につめる作業のときに、一つ一つの作品に必ず

          「いってらっしゃい」

          と声をかけます。

           

          「可愛がってもらいや〜」と、

          「後は任せたで!」という両方の気持ちを込めて。

           

           

          私の作品は、

          仏さまはもちろんのこと

          アクセサリーであっても、

          お守り的な存在として求められる方がたくさんおられます。

           

          例えば、

          ピアスをご愛用いただいている方が

          「『今日も守ってね』と毎朝つけたときに声をかけるのよ」

          と言ってくださったり。

           

          触れることで気持ちが落ち着く・・

          それは、私の力ではなく木の力やと思っています。

           

           

          私がいつも心がけているのは、

          「自分勝手に仕事をしない」ということで、

          木と相談しながら、それぞれの木の力、魅力が一番発揮出来る形に作り上げていくということです。

           

          だから大きさや木目を見て、その木に一番適した形に作り上げていきますし、

          削られている木が気持ちいいようにしっかり刃物も研ぎます。

           

          「何になりたい」という木の気持ちも大切に、仕事をしているつもりです。

          二人(?木やけど)の共同作業なのです。

           

          だから、

          手にされたときの喜んでくれてはるお顔だったり、

          「一生大切にします」の言葉だったり、

          とても嬉しくて、

          その木と「やったね!」とハイタッチしているような気持ちになります(笑)

           

           

          私は、精一杯のことをして送り出しました。

           

          あとはその木が、

           

          ご縁があった方の元で

          嬉しいときも悲しいときも、

          そっと寄り添う存在であってほしい。

          その方にとって、心安らぐ、気持ち華やぐ、

          プラスになれる存在であり続けて欲しい。

           

          そう思い続けています。

           

           

          まだまだお待ちいただいている方がたくさんおられます。

          これからも木と気持ち通わせながら、

          ひとつひとつ丁寧に仕事をして送り出していきたいと思います。

           

           

           

           

           


          待っていてくださいね

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            あちこちで桜の開花宣言が出始めたけれど、北向きの仕事部屋はまだ寒くて、

            暖房をつけながら仕事している。

             

            刃物を研ぎ上げて

            「さぁ仕上げるぞ!」

            と思っても、握った刀が切れへんときがある。

            2分から4分までの切り出し刀が10本くらい。

            「あかん、切れへん」

            と順番に取り替えて握って削って・・

            全部が全部、納得いく切れ味のときはそうそうあるわけやないけれど、

            全滅のときは思わずため息が出る。

             

            自分でも気がつけへんくらいの不調が研ぎに出る。

            難儀な仕事やなぁって思う。

             

            「切れへん」って言うてもまったく切れへんわけやない。

            ただ、作品の最終仕上げで求める切れ味は、十分やなくて十二分。

            削った面が濡れたように光る、刃物が木に吸い付くような切れ味が私は欲しい。

             

            気合い入れて研いだはずなのに、何でやろう?って考える。

            考えながら、十分の切れ味で出来る工程の別の仕事に切り替えたりするときもある。

            いろいろ考えながら、

            試しながら、

            また気持ちを整えていく。

            そしてまた研いでみる。

             

            「こんなもんでいいわ」っていう仕事は出来ないので。

             

             

            たくさんいただいている注文の品を、順番に彫る日々が続いている。

            今までは直接受けた注文は、その方のことを思い浮かべながら彫ってきた。

            ただ、申し訳ないことに12月16日以降に受けた注文の方は、

            ほとんどの方がお顔とお名前が一致しない。

            それでも皆さん楽しみに待ってくれてはるやろうから、ひとつひとつ丁寧に仕上げていく。

             

            逆にお顔が浮かぶのは、注文をお受け出来なかった方たちで・・

             

            あまりの注文の数に対応しきれないと判断してオーダーストップをかけた後に、

            ギャラリーにお越しいただいた方・・

             

             

            私が彫っているものは

            仏さんやったり、

            アクセサリーでもお守り的な意味合いのあるものやったりするので、

            必要とされる方の想いも深い。

            だからお受け出来なかったことがとても悔しい。

             

            あのときはもう限界やったから、お断りするしかなかった。

            でも、

            「私は生きている限り彫り続けるので、またお会いしましょうね」とお伝えした。

            次は手にしていただきたい。

            だから、気持ち整えて彫っていくしかない。

             

             

            ひとつひとつみんな行き先が違って、

            それぞれの方にとってたったひとつの存在になるもので。

             

            私にとってはどの木もみんな大事で愛おしい存在やから、

            最高の仕上がりで待っていてくれてはる人の所へ送り出してやりたいと思う。

             

            今お受けしている分を送り出した後には、

            次のご縁が待っている。

             

            気持ちも身体も健やかに、

            しっかり彫り続けていかへんと。

             

             

            長時間座りっぱなしで膝が限界やったので、あぐらクッションをついに導入。

             

             

            しっかり丁寧に仕上げていく。

             

            どんなに仕事が忙しくなっても、

            それはぶれたらあかんこと。

             

             

            だから、

            待っていてくださいね。

             

             

             


            添い遂げるということ

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              2月。

              一組の寄り添ったお地蔵さんを彫りながら、「添い遂げる」ということについて考えていた。

               

               

              私には縁のなかったことやなぁ。

              だから想像するしかないんやけれど。

               

               

              例えば、コタツに入って一緒にTVを観ながら交わす会話やったり、

              会話もなく過ごす時間やったり。

               

              小さな諍い、

              大きな争い、

              でも乗り越えて共に重ねる日々。

               

              許す気持ち、

              諦める気持ち、

              慈しむ気持ち、

               

              いたわり合って、

              歳を重ねて、

              やがて見送る方と見送られる方に別れ、

              思い出す時間・・

               

               

              もし今誰かに、

              「添い遂げたかった?」と聞かれたら私はどう答えるんやろう?

               

              「いや、別に」

              そう言うかなぁ〜って思ったときに、気がついてしまった。

               

              私が添い遂げる相手は「人」やなかったんやって。

               

               

               

               

              ひとつでも多く、彫れますように。

               

              一人でも多くのひとに、手渡していけますように。

               

               

               

               

               


              一息ついて、書いています

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                今週は久しぶりに欅の仕事。

                 

                彫ってても爪がえぐれてこないのが嬉しい。

                白檀の木は堅いから、

                刀を握る指にも強い力がかかって、刃物の当たる指の爪がすり減ってくる。

                仕事量が多いときにはテーピングをして彫るけれど、

                数時間もすればテープがすり減ってしまうほど。

                 

                欅も柔らかい木ではないけれど、白檀にくらべたらずいぶんと楽。

                それに、波紋みたいな木目がきれいで、彫っていても楽しい。

                 

                 

                ふと気がつくと、あんなにひどかった耳鳴りがほとんど治まっている。

                 

                やっぱりストレスが大きな原因なんやなぁ。

                一昨日、

                とても嬉しい出来事があった。

                 

                気持ち穏やかに今、仕事に向かえている。

                 

                 

                木を削る刀の音が少し曇ってきた。

                削る感触も重たくなってきたし、そろそろ研ぎ直さないと。

                 

                でもその前に、

                晩ご飯にしないとなぁ。

                 

                食事が済んだら刃物を研いで、

                今夜ももう少し頑張ろう。

                 


                小さな炎を静かに燃やして

                0

                   

                   白生地に包まれた仏さま。縦1寸7分、横1寸3分の香合仏。

                   

                  仏さまの仕上げのときは、木地を汚さないように白生地に包んで仕上げをする。

                  席を離れるときは、こうやってすっぽり包む。

                   

                  戻って、手にとって、布を開いて。

                  父がしていたのと同じように、私も仕事する。

                   

                   

                  小さな香合の蓋を開けると、蓮の上に大日如来さま。

                  お気に入りの大日如来さまがおられるので、そのお姿に似せて・・とのご注文。

                  久しぶりの香合仏の仕事。

                   

                   

                  私の手元には、20代の頃に彫った大日さんの香合がある。

                  若い頃の仕事は、勢いがある。

                  でも、歳を重ねて、いろんな経験をしたから彫れるようになったものもある。

                  仏さんのお顔は今の方がいい。

                  でも、光背の火炎、これだけスカッと彫れるやろうか・・?

                  そんなことを取りかかる前に考えていた。

                  気持ちで負けていたのかもしれない。

                   

                  煮詰まって、いろんなことを考えた。

                  彫りの仕事で悩んでいてもらったんやない、

                  他のことで悩んでいるときにかけてもらった言葉もいろいろ浮かんだ。

                   

                  いろんなしんどかったことも思い出したし、

                  いろんなひとにいっぱい助けてもらったことも思い出した。

                   

                  頑張ったってかなわへんひともいる。

                  けど、

                  昔の自分が出来たことが出来ひんのは我慢出来ひん。

                  そこに行き着いたら、すっと道が開けた。

                  私、負けず嫌いやから(笑)

                   

                   

                  丁寧に鉛筆で下描きをして、

                  三角刀で線を入れていく。

                  切り出し刀で炎の曲線を彫り出していく。

                  ひとつひとつ、丁寧に。

                  もう大丈夫。

                  動き出した小さな炎たち。

                   

                  もう大丈夫。

                  ひとつひとつ乗り越えて、

                  私はこれからも彫っていける。

                   

                   


                  糸をほぐして

                  0

                     今年はホトトギスがたくさん咲いて。

                     

                     

                    仕事が煮詰まっている。

                    頑張っても頑張っても上手くいかないし、進んでいかない。

                     

                    こんなときは一旦手を離して、他の仕事を挟んだ方が上手くいく。

                    経験上そうわかっていても、今回はそうしている時間がもうない。

                    せめて一日・・

                    今日は刃物に触らへん!

                    仕事場にも座らへん!

                    そう心に誓って過ごす。

                     

                    台所に座って、コーヒー飲みながらいろいろ考える。

                     

                    イラッとして引っ張って、もつれさせた糸をほどいていかなければならない。

                    何をどうしたらいいのか、

                    何が1番大切なのか、

                    絡まった糸をまずほぐしていく作業。

                     

                    誰かに助けてもらえることは何もなくて、自分でなんとかしなあかんことばかり。

                    諦めて、元気づけて・・心の中で自分と戦う。

                     

                    「大丈夫、大丈夫。」

                     

                    自分にそう言い聞かせる。

                    少しだけほぐれた糸をもうからませないように、

                    落ち着いて、ゆっくりと、でも確実に。

                     

                     

                     


                    私の仕事

                    0

                      今年の台風にも負けなかったザクロ。綺麗に色付いて。

                       

                       

                      気持良く晴れて、きっと観光地は賑わっていることやろう。

                       

                      集中して仕事していたら、身体のあちこちが不調を訴え始めた。

                      ずっと座りっぱなし。

                      休まなあかんとわかっていても、ついつい何時間も同じ姿勢のまま・・

                       

                      仏さんの仕事は、

                      いつも楽しいと苦しいが綱引きしながらになる。

                       

                      彫り進めるにつれ、思っていることに腕がついてこないもどかしさで泣きそうになる。

                       

                      「これでいい思ったら、そこから先にはいけへん。一生勉強や」

                       

                      父の言葉が浮かんでくる。

                      研ぎも彫りも、

                      もっと上手くなりたいなぁ。

                       

                       

                      どんな仕事も、

                      楽しいことばっかりやないやろうし、

                      圧倒的に苦しいことが多い仕事もあるやろうと思う。

                       

                      仕事ってそういうものやろうから、

                      私も逃げずに向き合いたい。

                       

                       

                       

                      ハナミズキ、もう散ってしまったやろうか。

                      少しでも長く彫ってたいけど、今日は少し歩いてこよう。

                      元気に長く彫るために。

                       

                      無理のきかへん年齢になってきたのを自覚しながら、

                      いろんな気持ちと葛藤しながら、今日も仕事する。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       



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