刃物と一緒に気持ちも研ぎ澄まして

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    今度のお地蔵さんは、少し細め。ここからまだ仕上げに一日かかる。

     

     

    高さ1寸1分、幅と奥行き6分で木出しして彫り進めていくお地蔵さん。

    途中、ウチのお地蔵さんたちの間に入ってもらって、バランスを見比べながら彫り進めていく。

    仕事の手を止めるときも、一緒に並んでもらっている。

    ひとりでさみしくないように・・と。

     

    ふっくらしてはったり、ちょっと痩せてはったり、お顔もいろいろ。

     

    「どんなひとのところにいくんやろうなぁ」

    って、彫りながらいつも思う。

     

    お顔の仕上げはいつも周りが静かになった夜中にすることが多いんやけど、

    今、暑くて、昼間ずっと使っている冷風機の音に周りの音がかき消されるから、しっかり深く集中出来る。

     

    仏さまを彫るという仕事は、身を削ること・・そんなふうに仕事をしてきた人たちを、ずっと見ながら育ってきた。

    私もあと何体彫れるんやろうなぁ。

    出来るだけたくさん、誰かの役に立てればいいな。

     

    さぁ、刃物を研いで、最後の仕上げ。

     

     

     

     

     


    昔、洗心で

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       仕事場の引き出しの中、白生地に包まれて眠っておられる仏さま。

       

      今はもうなくなってしまったけれど、哲学の道に「洗心」というお店があって、そこに置いてもらっていた仏さまです。

      額装して、壁に飾ってもらっていました。

      2体あって、1体はご縁があって旅立っていきましたが、この方はウチに帰ってきました。

       

      額からはずして、今は引き出しに入ってはります。

       

      彫ったのはもう10年くらい前になるでしょうか。

      ふくよかな手足、引き締まったお顔。30代の頃の作品、今彫ってもこんなふうには彫れへんなぁ・・と思います。

       

      この仏さまを覚えていてくださって、

      「あれ、良かったよねぇ」と言うてくれはった方がおられました(ブログに載せてって言うてくださってたのに、遅くなって申し訳ありません)

       

      もともと百貨店の催事用に作ってくれと言われて、

      その頃他の仕事もしていたし、娘もまだ小さかったし、なんとか時間をやりくりして何日も徹夜をして、ふらふらになって彫った仏さまです。

      「自分が思うことに手がついてくるまで何年もかかる」という父の言葉を思い出しながら、苦しんで、でも精一杯彫った仏さま。

      上手い下手でいうと決して上手くはないと思っていたので、帰ってきはったときに引き出しにしまってしまいました。

       

      仏師としてきっちりとした仕事をする父を見て育ちました。

      自分も修行にも出たので、たくさんの決まり事の中で仏像が作られていることはとてもよくわかっています。

       

      そういうところを離れて、もっと身近な仏さんが彫りたい・・と思っても、「崩したらあかん」と思ってしまう自分もいました。

       

      でも、ひとの心に響くのは上手い下手やないんや、

      決まり事にきっちり沿って作ってなくても伝わるんやと、

      最近ようやく納得できるようになりました。

       

      教えてくださったのは私のお客さまたちです。

      この仏さまのことでも、ずっと覚えててくれはったことはとても嬉しいことでした。

       

       

       

      実はもう1体、あのとき彫りきれなかった方がおられます。

       

      あれからいろんなことがありました。

      今やったら、柔らかいお顔に仕上がらはるような気がします。

      途中で止まったまま10年経ちましたが、いつか仕上げて見ていただけたら・・と思います。

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      大きな背中

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        木を削りながら、思い出すのは大きな背中。
        先週、奈良国立博物館で開催中の「白鳳展」に行ってきた。

        薄暗い館内はたくさんの人。ガラスケースの前をゆっくりと流れていく。
        お久しぶりの仏さまや、はじめましての仏さま。
        お寺におられるときは見られない、横からのお姿や、後ろ姿。
        正面からとは全然印象の違う方もたくさんおられて、とても勉強になる。

        会場の中ほど、順番に進んできて、「さぁ、次の展示室へ・・」と振り返って

        「えっ!?」

        そこにおられたのは、大きな大きな仏さま。

        薬師寺の月光菩薩さまだった。

        今回出で来られてるのは知っていて、お会い出来るのを楽しみにしていたのだけれど、
        私は20年以上お会いしてない間に、
        自分の中で“等身大より少し大きいお姿” と勝手に思い込んでいた。

        頭が混乱したまま、足元へ引き寄せられていく。
        見上げた先には凛々しいお顔。
        そっと後ろへまわらせていただく。初めて見るお背中。息をしておられるようだ。

        しばらく見惚れて、ぐるり一周させてもらって、また後ろにもどって。

        今生で、あと何回お会いできるかわからないけど、後ろ姿を見せていただけるのは、これが最初で最後かも・・
        そう思いながら、やわらかな後ろ姿をしばらく眺めていた私。

        「しっかり仕事しなさい」 そう言われた気がした。


        いろいろな素材でつくられた、たくさんの仏さまにお会いした。
        いつも思うんやけど、
        最初からそのお姿で、そこに存在してはったように思うんやけど、そうやなくて、
        誰かがつくったものなんやなぁ・・って。

        誰かがつくったものなんやけど、そのことを忘れさせる存在として、そこにおられる仏さま。

        私も“楽しい”と“苦しい”と両方の気持ちを感じながら、これからも彫っていくんやろうなぁ。
        そんなことを考えた秋の一日だった。

        昔々から今日まで、
        たくさんの職人がいて、たくさんの仏さまが生まれた。
        名は残らなかったけど、つくったものは残って、今もたくさんの人が手を合わす・・
        そんな仏さまがたくさんおられる。仏師の仕事って、すごいなぁ。

        私の父も、その中のひとり。

        父のように、たくさん彫ることは出来ないけれど、
        父のように、ひとつひとつ丁寧に仕事をしていこうと思う。


         

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