長く使っている砥石桶

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    砥石桶を二重にした。

     

     

    砥石は乾いていると使えないので、水を張った桶に常に浸した状態にしてある。

     

     

    ずっと使っている砥石桶は

    仕事場に借りた家に私らの前に住んではったひとが残していかはった洗面器で

     

    父が「これ使え」と。

     

    私が17のときの話やから・・37年かぁ〜

    プラスチックって劣化するよなぁ?

    ぼちぼち危ないんちゃうやろか?

     

    気づかない間にヒビが入って水漏れしても困るし

    持ち上げた瞬間に「バキッ」となって

    砥石を落として割ったり周りの木や道具を水浸しにしたらもっと困るし

     

    そうなる前に二重にしておこうと思って。

     

     

     

    二重にせんでも新しいのに替えたらいいんちゃう?

    と思わはるかもしれないけれど

     

    長く一緒にいたから愛着があって

     

    壊れたらあきらめるけれど

    今はまだ使っていたい。

     

     

     

    父と一緒に買いに行った仕上げ砥石もずいぶん薄くなった。

    何年か前に半分に割れてしまって

    今は2本になって。

     

     

     

     

     

    桶を乗せているこれは、父が針金ハンガーで作ってくれたもの。

    上の曲がっている部分に刷毛を引っかけてぶら下げる。

     

    良ぉ考えられているよなぁ〜と今も感心する。

     

     

     

    長く

    大切に使う

     

     

    これも

    父から学んだ

     

    大切なこと。

     

     

     

     

     

     

     


    今日は道具の手入れを少し

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      昨日、藤田芸香亭さんにちびにゃんとしっぽにゃんを連れて行って。

       

      仕事がひと区切りついたので今日は道具の手入れ。

       

       

      8月に実家から連れ帰ったままの道具たちがまだたくさんあって。

       

       

       

      砥石を洗って、ホコリを落として。

       

       

       

       

      仏さんを彫る以外の道具もたくさんある。

       

      セメント練って、外廻りの補修したりもしてはったなぁ。

       

       

       

       

      金槌だけでも10本近く。仕事によって使い分けてはったんやろう。

       

      錆を落としてやると、眠っていた道具がまた呼吸を始めたように感じる。

       

       

      「これ、何に使ってはったんやろう?」

       

      そんな道具もたくさんあって。

       

       

      いろんなことしてはったから。

       

      石も彫ってはったし

      釣り竿も作ってはったし。

       

       

      とりあえずみんなきれいにしてやって

       

      使えるもんは使わせてもらおう。

       

       

       

      多分もう、

       

      「使っていいぞ」って言うてくれてはるような気がするから。

       

       

       

       

       

       

       

       

       

       


      鋸を挽きながら考えたこと

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        窓辺で風に揺れて、鋸がカラカラ音を奏でて。

         

        鋸たちのくつろいでいる気配に安堵する。

         

        この夏、実家から10本以上の鋸を連れて帰って来た。

         

         

         

        その中の1本を使って、ちびにゃんの木出し。

         

        何十年ぶりに木を切って、今、どんな気分なんやろう?

         

        挽きながら鋸の気持ちを考える。

         

        そのあと

        「・・鋸の気持ちを考えるなんて私ぐらいやろうか?」と考える(笑)

         

         

        少し前に、素人さんが鋸を挽かはるのを見る機会があって

         

        その使い方にびっくりしたし

        「あぁ、こうやって鋸を傷めはるんやなぁ」と納得した。

         

        力任せに挽くその姿には、道具への愛情が感じられへんかったし

         

        何よりそれがショックやったかも。

         

         

        昔々修業先で

        「道具は消耗品や」

        と、師匠が言わはった言葉も思い出した。

         

        確かに、使ったら減るんやけれど

        その言葉に違和感を感じて、それは今でも消えなくて

         

        修行を途中で辞めたのには他にもいろいろ理由があったけれど

        私にとってはその言葉も大きな理由のひとつやったなぁ、と。

         

         

         

        この鋸も、きっと元はもっと大きな鋸で

         

        多分両刃やったのを使い込んで、作り変えて。

         

         

        割れたり欠けたりして終わりやなくて

         

        大切にまた使い続ける

         

        きっと楽しんで作り変えてはったはず。

         

         

        父はそういうひとやった。

         

        道具を作り変える技術もあったし、

        道具への愛情もあった。

         

         

        私が父から受け継いだ道具への愛情っていうのは

         

        当たり前のことやと思っていたけど

         

        もしかしたら特別なことなのかもしれへん。

         

         

        そうやないひとの方が多いんかもしれへんと、最近思うようになった。

         

        そして

        愛情を持って接することが出来る自分で良かったとも思うようになった。

         

         

         

        大切な相棒たち。

        これから一緒に、たくさん仕事が出来ますように。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        鉋と木箱

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          母の所から、父の道具を持ち帰って来た。

           

           

          実家にはまだ、大きな鋸や鉋などが残っている。

           

          ぼちぼち運ぼか、ということになり、まずは鉋を連れて帰って来た。

           

          鉋を入れていた木箱。

          これも父のお手製やろう。

           

          一カ所板が外れていたので、ボンドを入れて、当て木をして、はたがねで固定する。

           

           

           

          ・・当たり前にする作業やけれど、これも当たり前やないんやろうな。

           

          はたがね、どこの家にもあるわけやないやろし。

           

           

           

          埃をかぶっていた鉋も、刃に油をひいて台を布で拭いてやったら、生き生きとして。

           

           

          以前見たときは錆びなんか出てなかったのに。

           

          「そろそろ連れてったらへんと使えへんようになるぞ」

           

          父にそう言われたような。

           

           

          でも、

          こんな大きい鉋使う仕事、なかなかないで、お父ちゃん。

           

          まぁ、でもいつか

          使えるような仕事が出来たらいいなぁ。

           

           

           

          木箱は

          私の手元に来ていた木箱とぴったり同じ大きさで

           

          26年ぶりに再会して

          これからはずっと一緒に。

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          一番好きな彫刻刀

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            私の一番好きな、8分の丸の小道具。

             

             

            あの夜、刃物屋さんのガラスケースの中にあったこのコに一目惚れ。

            でも、一緒に買い物に行っていた兄弟子より先に選ぶことは出来ひん。

             

            「お願いやし選ばんといて〜!!」と心の中で叫んでいたなぁ。

             

            手に入れたとき、嬉しかった。

            私の手元に来て、もう30年以上。

             

             

            今、この道具で花びらを彫る時間がとても幸せ。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             


            刃物を研いで

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              お地蔵さんの仕上げの前に、刃物を研いで。

               

               

              一番よく使う切り出し刀。

              4分は荒彫り用、3分以下のものを仕上げに使う。

               

              切れ止んだら持ち替えて、全部切れ止んだらまた研いで。

               

               

              私の切り出しは研ぎの角度が鋭角。

              木彫教室の生徒さんが、いつもうらやましがってはったなぁ。

               

              この方が細い所に刀先が入りやすいし、曲線も彫りやすい。

              最初からこの角度やなくて、研いでるうちにこうなっていく。

              というか、研ぎの度に角度をつけることを意識して研いでいく。

               

              「だから頑張って研いでな」っていつも話してた。

              みんな、頑張って研いでくれてはるやろか?

               

               

               

              刃物を研いでいるとき、

              いつも父に研ぎを教わった時のことを思い出す。

               

              研いでいると砥の粉が出てきて、砥石の表面が汚れてくる。

              「砥の粉が付いてるときれいに研げへんから、刷毛で取らなあかんぞ」

               

              砥石の表面を水で濡らした刷毛で拭き取って、きれいにしながら刃物を研ぐ。

              父はそう教えてくれた。

               

              でも、

              私が「まだいいやろ」と思っていても

              父にとっては「もうあかん」みたいで、

              何度か注意されて

              しまいには刷毛を握りしめた父が私が研ぎ具合を確認するために刀を上げると

              そのタイミングで砥石を拭く・・というようになって。

               

              なんか、餅つきの間の手みたいやなぁと思いながら、刃物を研いでいたっけなぁ。

               

              35年経った今でもそのことを覚えていて

              今は父がしたのと同じくらいの頻度で、刷毛で砥石を拭く私。

               

               

              「仕上げのときは力いらんぞ。やさしくやさしく、な」

               

               

              今も父の声が聞こえる。

               

              そして

              やさしくやさしく刀を研ぐ。

               

               

              そうやって大切に研ぎ上げた刀で

               

              気持ち研ぎ澄まして木を削る。

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               

               


              やわらかな灯りの元で

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                日暮れがずいぶんと早くなった。

                 

                北向きの仕事部屋も寒くなってきた。

                暖房器具はまだ出してないけど、母が縫ってくれた膝掛けが活躍仕出した。

                 

                 

                手元を照らす、電気スタンド。

                やわらかなオレンジ色の灯り。ほんのり温かい。

                 

                今年の春、電球をLEDからクリプトン球に戻した。

                ものすごく細かい仕事ばかりをするようになって、疲れ目がひどくなってしまって。

                 

                「こんなに暗かったっけ?!」

                LED球の明るさに慣れてしまっていたので最初はそう思った。

                点けたらすぐに熱くなるから、夏場はちょっと距離を取りながら仕事をしていた。

                 

                今、だんだん寒くなってきたので良い感じ♪

                 

                 

                元々この灯りで仕事をしていた。

                父も、私も。

                 

                世の中どんどん進んでいって、

                新しい便利なものもたくさん出てくるけれど

                 

                新しいものが必ずしも使い勝手が良いとは限らへん。

                 

                省エネになると思って換えたんやけれど

                目を労ってやらないと仕事が続けられへん。

                 

                そう思っての後戻り。

                 

                 

                やわらかな、やさしい灯りの元で木を削る。

                削った木肌があめ色に光り輝いて、幸せやなぁと思う。

                 

                LED球が主流になってきているので、

                いつかはなくなってしまうのかもしれへん。

                 

                そのときは仕方ないけれど

                出来れば最後まで、このやさしい灯りで仕事がしたいなぁ。

                 

                そう思って、電球を少しずつ買い溜めている。

                電気スタンドも、1台予備を購入した。

                 

                今使っているのは5年目くらいかな?

                その前のは父が使っていたやつやから、親子二代で30年くらい使ったやろうか。

                もう灯りはつかないけれど、今も仕事場で私のそばにいてくれている。

                 

                今使っているのも30年頑張ってくれるんやったら

                予備は使う機会がないかもしれへんなぁ。

                 

                電気スタンド、

                私、

                どっちが先に終わるかわからへんけど(笑)

                仲良く仕事をしていきたい。

                 

                 

                オレンジ色の灯り

                暗い仕事部屋に浮かび上がる、仕事している父のシルエット。

                 

                温かな記憶。

                重ねていく私の時間。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                新しい彫刻刀

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                  先日購入した5厘の平刀と、ストックしてあった3分の切り出し刀。

                   

                  昔父が彫った等身大の肖像の端材で、柄を作る。

                   

                  30年も仕事していると必要な道具はあらかた揃っているから、道具を買いに行くこともほとんどない。

                  でも平刀は使い込んで短くなってしまったので、新たに購入した。

                  短くてもまだまだ使えるんやけど、長くないと彫りが届かへんところもあるので。

                   

                  ほんまは5厘やなくて、3厘がほしかったけど、「ない」って言われた。

                  もう1件の道具屋さんやったんかなぁ?

                  そちらの職人さんはもう亡くならはって、お店がなくなってしまった。

                   

                   

                  柄を据えるのは大好きな作業。

                  父から教わったとおりに今も手を進める。

                  修行に行くことが決まって、最低限必要な道具を父と一緒に四条の常久さんに買いに行って、

                  父に教わりながら二人で柄を作った。あれも7月やったなぁ。

                   

                  柄の木には桧を使う。

                  柔らかくて削りやすいから、楽しくて。

                   

                  自分の手になじむように形を整えた柄。削りたてで真っ白な木は、また使い込まれて色が変わっていく。

                   

                  残りの人生、一緒に仕事してくれる道具たち。

                  もう5厘の平刀は買い足さんでも大丈夫やろう。

                   

                   

                  ・・「こんな細い道具、何に使うの?」って思わはりますか?

                  いつも彫ってる1寸のお地蔵さんの、耳の後ろ彫るのに使います。

                  他にも、観音さまの首元とか。

                  私は細かい仕事が多いので、細い道具がけっこう必要です。

                   

                  しっかり研いで、大切に使います!

                   

                   

                   


                  古い道具箱

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                      引き出しの取っ手。 父が作った。

                     

                     

                     父の道具箱。七段引き出しの方は漆が塗ってある。

                     

                    道具箱ももちろん父が作ったもの。

                    浅い引き出しには彫刻刀、深い引き出しには鑿(のみ)、一番深い引き出しには鉋(かんな)などが入っている。

                     

                     梅干しの種や金属で作られた取っ手もある。楽しんで作ってはったんがよくわかる。

                     

                     

                    一番最初に作らはった道具箱の引き出しは、私が修行を始めるときに譲ってくれはった。

                    作らはってから70年近く経っている今も、大切に使わせてもらっている。

                     

                    父ほど凝ったことは出来ひんけど、私も自分で道具箱を作るし、取っ手も作る。

                     

                    中に納める道具にも、道具を納める器にも、こだわりと愛情を込めて。

                     

                    これも父から教わったこと。

                     

                     

                     

                     

                     


                    毛引きと金槌

                    0

                       ずっと使っている毛引きと金槌のセット。それと豆鉋。

                       

                      家が火事になる夢を見たとき、夢の中の私はこの道具を持って逃げようとしていた。

                      普段意識していなかったけど、それほど大事に思っているんだろう。

                       

                      父お手製の道具。竹で作られた金槌の柄。 東京の個展のとき、この曲線を「セクシーだ」と言ったひとがおられた。

                      この小さな金槌で毛引きを叩いて、刃の出す幅を調整する。

                       

                      きっと何度も手にとって握って振ってみて、

                      握りやすさ、叩きやすさのバランスを考えながら少しずつ調整して、削り出した柄の形なんやろう。

                       

                       小ぶりの毛引きは手にすっぽり収まって、使いやすい。

                       

                      いつ頃やったか覚えていないけど、私に譲ってくれた道具。

                       

                      仏さんになる木もあれば、仏さんを作る道具になる木もある。

                      どの木も皆、愛おしい。

                       

                       

                       



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