宇治を歩けば思い出す

0

    今日は所用のため宇治へ。

     

    用事を済まし、せっかく来たんやからと興聖寺まで足を伸ばすことに。

     

     

    宇治橋商店街を抜け、平等院通りへ。

     

    いつも茶団子を買う稲房さんの横、細い道に入って坂を上がり、宇治川沿いへ。

     

    地元民が通る道。この坂を登り切った所の紅葉が好きで。

     

     

     

     

     

     

    東京から帰って一週間。

     

    だんだんと疲れが出て来ているけれど

    季節は待ってくれないから 頑張って。

     

     

     

     

     

     

     

    朝霧橋を渡って対岸へ。

     

    上流へと歩く。

     

     

     

     

    小学生の頃

    あの角っこで父と川エビ釣りをしたなぁ。

     

    エビを釣っていたのに見知らぬ魚がたくさん釣れて

    家に帰って調べたら、ブルーギルで。

     

    この場所を通るといつも思い出す、遠い夏の日。

     

     

     

     

     

    興聖寺の琴坂。

    少し見頃は過ぎていたけれど

     

     

     

    散った紅葉がまだ色鮮やかで

     

     

     

     

     

    子供の頃

    秋になるとお寺の裏の大吉山に

    椎の実を拾いに父と登った。

     

     

    夏には

    今は落ち葉でいっぱいのこの細い流れに降りて

    沢蟹を探したりした。

     

     

     

     

     

     

    いつもお参りしていたけれど

     

    参拝料を払って中に入ったことは一度もなかった。

     

    静かな境内、上がらせてもらおうかと思い

    初めて中に入ってお参りさせてもらった。

     

     

    何体もの仏さまや肖像彫刻

    廊下を渡りながら順番にお堂を回って

     

     

    お庭の池の中

    じっと動かない錦鯉

    流れる水の音

    瓦屋根の向こうに見える山の木々と青空と

     

     

    大書院の廊下でひとりきり

    そんな景色を眺めていたら

     

    「一緒に来たかったなぁ」

     

     

    声に出さずにいられなかった。

     

     

     

    きっと

     

    お庭の木にも石にも

     

    天竺殿への階段の景色にも

     

    もちろん仏さまにも

     

     

    いろんなことに感心しながら、見て回らはったやろうなぁと

     

    二人でいろいろ語れたやろうなぁと

     

     

     

     

     

     

     

    木も花も

     

    魚や鳥や虫も

     

    みんなみんな

     

    父との思い出とつながっていて

     

     

     

     

     

    少しだけ残った桜の葉

     

    覗き込んだ川に、魚の姿。

     

     

    あれはニゴイやな。

    鯉とニゴイの見分け方を教えてくれたのも父。

     

     

    「ニゴイはなぁ、美味しないんや!」

     

    そのときそう言っていたのも、いつも思い出す。

     

     

     

     

    海も山も川も

     

    みんな大好きなひとやった。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     


    音が重なる、そこに父がいる

    0

      刃物を研いだ。

       

       

      4分の切り出し刀。最近柄を据えたばかりのものと、長年使い込んだもの。

       

      どちらも同じ幅なのに、違って見える。

       

       

      鋭角な方が使いやすいから

       

      研ぐ度におしりの方に強めに力を込めて、少しずつ角度をつけていく。

       

       

      「先生のその刀欲しいわぁ〜」

       

      いつもそう言うてはった生徒さんのことを思い出す。

       

      「研ぎながら作っていってくださいね」

       

      そう答えていたけれど、今は刀の角度、どうなっているのかな?

       

       

       

      研ぎは父に教えてもらった。

       

      「砥石の端から端まで使って研ぐんやぞ」

       

       

      最初の内は手元が定まらないので

      長い距離をふらふらさせずに手を動かすのは難しい。

       

      でも同じ場所ばかり使って研いでいたら砥石が狂ってしまう。

      狂った砥石では上手く研げない。

      だからまんべんなく砥石を使えと。

       

       

       

      もっと端まで。もっと早く。

       

      隣に座っていた父の声を思い出しながら

       

      いつも以上に砥石のぎりぎり端まで刀を滑らしていると

       

       

      「あっ、この音や」

       

       

      記憶の中の、父が刃物を研ぐ音と重なった。

       

       

      暮らしの中で

      いつも聞いていた音。

       

      宿題しながらやったり

       

      布団の中で眠りに落ちる前やったり

       

      自分も仕事しているときやったり

       

      26年間ずっと聞き続けていたあの音と同じ音。

       

       

      ほんまに端の端まで使ってはったんやなぁ

       

      教わったこと、ちゃんと出来てへんかったなぁ

       

       

      やっと重なったこの音を

       

      「やっとやなぁ」

       

      と、向こうで聞いていはるかも。

       

       

      ちょっとも手ぇ抜かへんひとやったんやなぁと改めて思ったし

       

      私、もっと精進しなあかんと思ったし。

       

       

       

      次からも音が重なるように

       

      丁寧に仕事をしよう。

       

       

       

       

       

       

       

       


      かんな屑がくるくると

      0

        今日は刃物研ぎ。

         

        それが済んだら檜の仕事。

         

         

        やわらかいなぁ〜鋸めっちゃ楽!

         

        久しぶりに刃物に柄を据える。

         

        ここ数年は時短のために、ホームセンターで買ってきた細い板材を使って柄を作っていた。

        けれど「刃物の柄用に」と何十年も前からストックしてきた端材がある。

        この先たくさん柄を据えるわけでもないやろうから、使っていかんと。

         

        切った檜に鉋をかける。

        張り合わせる面だけでいいや、後で削ってしまうから。

         

        使う鉋は自分のものと、父のものと。

        鉋台は父のもの。

        鉋台っていうか、鉋板。細かい仕事用。これも父作。

         

        等身大の大きなお像の端材。

        思い出のあるこの木でずっと柄が作りたかった。

         

        仕事場に満ちる檜の香り。

        くるくると広がっていく、かんな屑。

         

        小さい仕事やけど

        それでもたくさんのけずり屑が出て

         

        他の木や

        道具たちが

        うずもれていく。

         

         

         

        鉋かけは、父に教えてもらった。

         

        高校2年の夏休み前

        父の仕事場で父と二人で

        私のまな板(仕事台)に鉋をかけた。

         

        汗にまみれて交代交代に

        大きな檜の板に

        大きな鉋で

         

         

        あの頃近所にあった材木屋さんの倉庫の奥に

        「あんな、目ぇつけてる檜の板があるんや。

        あれ、お前のまな板にちょうど良い思うんやけどな」

         

        仕事しながら考えてくれてたんやろうなぁ

        これから自分の後を追ってくる娘に必要なものをいろいろと。

         

         

        二人で買いに行って

        担いで帰って来て

         

         

        仕事スペースに敷くベニヤ板も買いにいったなぁ

        その時も二人で担いで

        すれ違うひとがみんな見てはったっけ。

         

         

         

         

        ふわふわのかんな屑がどっさりと出て

        二人とも木屑まみれで

         

        「木屑まみれやなぁ〜」って笑う私に

         

        「どうせ木屑にまみれて生まれてきて、木屑にまみれて死んでいくんやさかい」

         

        そう言った父。

         

         

         

         

        私、

         

        あれからいろいろあったけど

         

        またここに戻って来られたよ、お父ちゃん。

         

         

        このままいけるよう頑張るわ。

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         


        木彫のザクロ

        0

           

          今年もザクロがたくさん蕾をつけてくれました。

           

           

           

           

           

          これは父の彫ったザクロ。私の宝物です。

           

           

           

           

           

           

           

           

          彫りもすごいけれど、彩色もすごい。 ほんまのザクロみたい。

           

           

           

           

          5月は

           

          自分の誕生日で始まります。

           

          今年54歳になりました。

           

           

          それから

          父の命日と。

           

           

          もう28年も経ちました。

           

           

           

          娘が今年26歳になって

           

          私が父を見送ったのと同じ歳で

           

           

          早いよなぁ〜って。

           

           

          父の歳に追いつくまであと15年。

           

          あっという間やろうなぁと思います。

           

           

          そこまででひと区切りと考えていて

          そこから先があればそれはオマケの人生やと

           

           

          遠くにいってしまわはったと思っていたひとが

          だんだん近くになってきてはるなぁと感じながら

           

           

          もうしばらくこちら側で

           

          一生懸命彫りたいと思います。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           


          木を選びながら思うこと

          0

            ひとつ仕事が仕上がって

             

            次に彫るものを決めて、木を選ぶ。

             

             

            その作業は楽しい作業なんやけれども

             

            最近違うことも思うようになってきた。

             

             

            「あ〜〜っ、口惜しいなぁ、これ、残していかなあかんのやなぁ!」

             

            って。

             

             

            どう考えたって私の残り時間で彫りきれる量やないねん。

             

            それが口惜しい。

             

             

             

            それにしても

             

            とんでもない量の仕事をしはったんやなぁって思う。

             

             

            それでもきっと

             

            もっと彫りたかったやろうなぁって思う。

             

             

            仕事以外に

             

            自分の好きなもんで彫りたいもん、いっぱいあったやろうなぁ。

             

             

             

            ・・どれだけ彫っても

             

            「もういいわ」

             

            は無いんやろうな。

             

             

            それはきっと

             

             

            父も私も同じなんやろうな。

             

             

             

             

            どうかひとつでも

             

            多く彫っていけますように。

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             

             


            仏を彫る手

            0

              「きれいな手ですね」

               

              時々、そう言ってもらうことがある。

               

               

              そうかなぁ?と自分では思う。

               

              そしてあることも思い出す。

               

               

              以前、他の仕事もしていたときに、勤務先で顔を合わせたひとにこう言われた。

               

              「きれいな手やなぁ!何もしてないやろ?」

               

              「そんなことないですよ〜」と笑いながら

               

              家事も子育てもしてるし、

              仕事も掛け持ちでしてるんやけどな〜・・・

              って思ってた。

               

              その記憶があって、なんか、手がきれいやと頑張ってへんみたい・・って悪いふうに捉えてしまう。

               

              今言うてくれはるひと達は

              私が職人なのを知ってて言うてくれてはるひと達やから、そんなことはないんやけれど。

               

              あかんなぁ、マイナス思考やし(笑)

               

               

               

              手荒れをしないのは、木の油が良いんやないかと言わはったひとがおられた。

               

              そうかもしれへん。

              めっちゃ良い白檀の木は、削るとじわっと油が滲むことがある。

               

               

               

              私が思う「きれいな手」は父の手で

               

              節くれ立ってゴツゴツの職人の手で

               

               

              仕事をしながら

              自分の手を眺めながら

               

              少しはあの手に近づけているんやろうか?といつも考えている。

               

               

              合わせた掌は、同じ大きさやった。

              指の太さは1.5倍。

               

              父の手がない今、もう比べられへん。

              手形でも採っておけば良かったなぁ。

               

              ずっとそんなことを考えていたけれど

               

              少し前、

              古い資料写真を見返していて、写り込んでいる父の指を見つけた。

               

               

              それは

              とてもふくよかで

               

              私の今の指と

              とても似ていて

               

              手の甲の、ゴツゴツしたイメージばかり残っていたけれど

               

              こんなにやわらかなふくらみを持った指先やったんや。

               

               

              少しは近づけているんやな、

               

              そう思ったら泣けてきた。

               

               

               

               

               

              だんだんと肉厚になってきた私の掌。

               

              きっと仏さんが

              自分が包まれていて気持ちの良いように変えていってくれてはるんやろうなぁ。

               

               

              そうなんやったら

              私も少しは認めてもらえるようになってきたと言うことやろうか。

               

               

              これからも

               

              ずっと

               

              彫り続けて良いっていうことなんやろうか。

               

               

               

              あの手にもっと近づけるように

               

              仏さんに気持ち良く生まれてきてもらえるように

               

              もっともっと精進していかねばならない。

               

               

               

               

               

               

               


              また1つあきらめて

              0

                兄の家の台所で

                懐かしいスプーンを見つけた。

                 

                 

                おさるのカレースプーン。

                 

                私も子供の頃使っていたもので

                兄が幼稚園で使っていたものやと聞いていた。

                 

                裏にひらがなで、兄の名前が彫ってある。

                 

                もちろん彫ったのは父。

                 

                 

                去年の引越しのときに見当たらへんかったので、母が処分してしまったんやと思っていた。

                 

                家を出るときに

                兄が持って出ていっていたんやな。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                姉がまたねこと暮らすようになって

                 

                時々家に遊びに行くようになった。

                 

                 

                この前行ったときは庭を案内してくれて

                 

                そこには

                ホタルブクロや蘭や椿など、

                父が愛した植物たちが葉を広げ

                 

                姉の所にもたくさんもらわれていたんやなぁ〜と

                 

                そして

                 

                大切に育てられているんやなぁと。

                 

                 

                 

                 

                兄も

                姉も

                 

                みんな

                父のことが大好きなんや。

                 

                 

                そしてどちらの家も

                 

                玄関開けたときに木の匂いはしぃひんけれど

                 

                家のあちこちに

                 

                私の彫ったねこや仏さんがとけ込んでいて

                 

                それは

                私ら三人が育ったあの家と同じような風景で

                 

                 

                 

                ほとんどすべてを受け継いだ私

                 

                二人に懐かしいなぁと思ってもらえるあの仕事場を早く再現したいと、また思った。

                 

                 

                 

                 

                父本人はもう

                 

                 

                とうの昔にあきらめて

                 

                あちら側で友人や親戚の皆と楽しく過ごしているんやろうに

                 

                 

                私だけいつまでも

                 

                5月になるとぐすぐすと

                 

                 

                 

                もうこれからは会える日も、だんだん近づいてくるんやろうに

                 

                 

                 

                でも

                まぁ、きっと私は

                 

                一生こんな感じなんやろうな。

                 

                 

                仕事場の父の写真に話しかけながら

                 

                泣いたり笑ったり。

                 

                 

                 

                 

                それはそれであきらめて

                 

                彫れるかぎり彫っていこうと思う。

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 

                 


                気持ち穏やかに、2月の始まり

                0

                   

                  2月のスタート。

                   

                   

                  今朝、久しぶりに父の夢を見た。

                   

                   

                  元気やった頃の父で

                   

                  たくさん仕事の話をした。

                   

                   

                  実家やなくて、二人で暮らした仕事場の、父の部屋やった。

                   

                  そういえば夢に出て来はるときはいつも実家の方やったなぁ、と、珍しいことやなと思う。

                   

                   

                  娘の話もした。

                   

                  娘が生まれる前に旅立たはったけど、

                   

                  見ててくれてるんやなぁと感じた。

                   

                   

                  以前は

                  亡くなった日から年を重ねる度に、どんどん遠くなっていかはると思って悲しかったけれど

                   

                  最近はそう思わなくなった。

                   

                   

                  自分も歳を重ねて

                   

                  だんだん父のいる方に近づいてきているからやろう。

                   

                   

                  また会える。

                   

                   

                  そのときに「よお頑張ったな」と言ってもらえるように生きていこう。

                   

                   

                   

                   

                   

                  鯛焼き1匹、ささやかな幸せ。

                   

                   

                  エネルギーチャージして、夜まで頑張る。

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   

                   


                  父からの宿題

                  0

                    ここ数日また厳しい暑さやけれど、蟬もあんまり鳴かなくなった。

                     

                    夜には秋の虫の声。

                    自転車に乗って感じる風も、変わってきたなぁ。

                     

                    季節が進んで行く。

                    明日からは9月。

                     

                     

                    8月、

                    12日に母が引越して

                    22日が実家の片付けの最終日で。

                     

                     

                    母の引越しまでも大変やったけど

                    その後の方がもっと大変で

                     

                    母の新居での荷物の荷ほどき、

                    母が「いらない」と言って実家に置いていった物の片付け、

                    まだ残っている父の道具などを運び出す準備、

                    自分の家の家事と、自分の仕事の段取り・・

                     

                    やらなあかんことが多すぎて、

                    頭パンクしそうやった。

                     

                    正直いつ何をしていたか、あまり思い出せない。

                     

                    ただ、

                    引越し当日は大雨で

                    その後も天気予報はずっと傘マークで

                     

                    なのに荷物を運ぶ日の運ぶ時間になると必ず雨が止んで

                     

                    「きっとお父ちゃんの仕業やなぁ」

                     

                    そう話ながら姉の車で何度もトランクルームや家に荷物を運んでいた。

                     

                     

                    今回の引越しで

                    私が把握していなかった材木がたくさん出てきた。

                     

                    私が実家で暮らしたのは2歳から16歳まで。

                    17歳のときに父が同じ町内に仕事場として借りた家にくっついて行って、

                    結婚して家を出るまでの9年間、

                    その仕事場で父と二人で寝起きしていた。

                     

                    父が亡くなって、

                    仕事場を引き払って、

                    荷物をまた実家に運んだ。

                    彫刻刀などは私の手元に引き取ったけど、

                    すべての道具や材木を引き取るスペースはなかったから。

                     

                    今回見つかった材は、その仕事場に父が持っていかずに実家に置いたままにしていたもの。

                     

                     

                    裏の物置は、トタンの扉も傾いて外れそうになっていて

                    扉の隙間からは雨風が入り込み

                    長い年月で、古い段ボール箱は風化していて

                     

                    開けると枯れた笹の葉や砂が積もっていて

                    「裏の竹藪にあった笹やな」

                     

                    姉にそう言われて、昔、家の裏手が藪だったことを思い出して。

                     

                    奥の部屋の窓の外は羊歯が生い茂る土手で

                    見上げると竹が風に揺れていて

                     

                    土手の上はウチの猫達の通り道で

                    風に揺れる竹の音

                    猫の鈴の音

                     

                    いろんな景色を思い出した。

                     

                     

                    大きさを揃えて丁寧に詰め込まれた材を、取りあえずすべて取り出して、

                    新しい段ボールに詰め替える。

                     

                    父の手を感じながら

                    同じように丁寧に詰め替えることは時間的に難しく

                    「ごめんな、後でちゃんと整理するしな」

                    心の中で詫びながら段ボール箱に投げ込んでは運び出す。

                     

                    何箱もその作業を繰り返し

                    運び出した材木は、今、まだ、ウチの玄関に積み上げたまま。

                     

                     

                    ゆっくり、

                    木と

                    父と

                    会話しながら

                    少しずつ仕分けしていこうと思う。

                     

                     

                    それからもう一つ、

                    大きな発見は

                     

                    段ボール箱一杯の、彫りかけの仏さま。

                     

                    「これ、知ってるか?」

                    母にそう問われて開けたミカンの段ボール箱には、無造作に詰め込まれた仏さんたちが!

                     

                    「一生仕事あるな」

                    母が笑ってそう言ったけど

                    とても彫りきれる量やない。

                     

                    でも、たくさんの仏さんの中には

                    大黒さんや半跏のお地蔵さん、

                    仕上げてみたいと思うものが何体かあった。

                     

                    今まで私の手元にあった父の仏さんは

                    小ぶりな上にとんでもない技量で彫られていて

                    仕上がっていないその仏さんたちを

                    「後はお前が彫れ」

                    生前父は笑ってそう言っていたけれど、恐れ多くて刀を入れることは出来なかった。

                     

                    今回見つかった仏さんたちは

                    彫ってみたいと思えるものやった。

                     

                    「彫ってみたい」と思える自分になれたから出会えたのかもしれない。

                     

                     

                    彫りかけの仏さん、

                    たくさんの材、

                     

                    今年の夏

                    父から出されたたくさんの宿題は

                     

                    夏が終わろうとしている今、まだほとんど手付かずで

                     

                    と言うか

                    一生頑張っても終わらへん量で

                     

                    これからの時間、どう生きるか考えさせられていて

                     

                     

                    彫りたいなぁ。

                    一日でも長く

                    一つでも多く。

                     

                     

                    「ワシみたいになるなよ」

                     

                    そんな声も聞こえた気がした。

                     

                    やっと落ち着いて座れるようになった仕事場のいつもの場所で

                     

                    彫りながらいろんな答えを探し始めている。

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     

                     


                    「ずっと会いたかった」その願いが叶った日

                    0

                      今日、あるお寺で、父の仕事に再会してきました。

                       

                       

                      30年以上前の話です。

                      父は、あるお寺の管長さんの肖像を彫っていました。

                       

                       

                      等身大のお像、久しぶりの大きな仕事でした。

                      檜の寄せ木作りで

                      大きな鉋で木を削り、貼り合わせ、鑿打ちして・・

                       

                      すべての工程、一人で作業していました。

                       

                      それからずっと、そのお寺にお参りするたび、

                       

                      「どこにいはるんやろう?」

                       

                      いつもそう思っていました。

                       

                      昨年ご縁があって仲良くなった

                      そのお寺に勤めておられる方に尋ねても、わかりませんでした。

                       

                       

                      それがご縁がつながってつながって

                      どこにいはるかがわかり、

                      会わせていただけることになり、

                       

                      今日、安置されたお像に対面させていただきました。

                       

                       

                      彩色が済んで、仕上がったお姿は

                      父本人は見ていないと思います。

                       

                      生前の管長さんをご存知の方が

                      「そっくりです」

                      と言ってくれはって

                       

                      実際にお会いすることなく

                      何枚かの写真だけで彫り上げた父にとっては最高の褒め言葉やろうなぁ、と。

                       

                      私も

                      家中に満ちていた檜の香りや

                      鉋の音などが鮮やかに蘇り

                       

                      そして改めて父の仕事の素晴らしさを目にして

                      もっと精進しようと思いました。

                       

                       

                      家に帰って

                      仕事場の父の写真に

                       

                      撮らせてもらったお像の写真を見せながら

                       

                      「お父ちゃん、会ってきたよ」

                       

                      そう報告しました。

                       

                       

                      今、

                      自分のまわりがいろいろと変化していく時期で

                      これから先のことを考えていく中で

                      このタイミングで再会できたことにも深い意味があるように感じています。

                       

                       

                      ご縁をつないでくださった方々に深く深く感謝です。

                       

                       

                       

                      父の仕事に会えて良かった。

                      あのひとの娘で、本当に良かった。

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       

                       



                      calendar

                      S M T W T F S
                           12
                      3456789
                      10111213141516
                      17181920212223
                      24252627282930
                      31      
                      << March 2024 >>

                      selected entries

                      categories

                      archives

                      recent comment

                      • おりんを包み込む蓮の花
                        setsu
                      • おりんを包み込む蓮の花
                        corin
                      • つながる思い
                        setsu
                      • つながる思い
                        Sayoko
                      • 黒檀の蓮華
                        setsu
                      • 黒檀の蓮華
                        rico
                      • 白い花
                        setsu
                      • 白い花
                        マリ
                      • 雨降り
                        setsu
                      • 雨降り
                        マリ

                      recommend

                      links

                      profile

                      search this site.

                      others

                      mobile

                      qrcode

                      powered

                      無料ブログ作成サービス JUGEM