小さいからこそ

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    「そんなに小さくて、彫るの大変じゃないですか?」

     

    ある人に、そう問いかけられた。

     

    彫りながら私はなんて答えたやろう?

    このところ、その場面を思い返しながら、日々木を削っているのだけれど。

     

    いつも彫っているお地蔵さん。

    高さ1寸1分、幅と奥行きは6分に木出しする。

    蓮台、お地蔵さん、光背合わせての高さやから、

    お地蔵さんの大きさは7分5厘ほど(2、5センチくらい)

     

     

    「下描きしないんですか?!」とも問いかけられた。

    四角い木に、台座、首、頭の位置に鉛筆で線を引き、その上に鋸を入れる。

    あとは手が覚えているから、描かなくても大丈夫。

     

    確かに小さいとは思うけど、

    香合仏やったらもっと小さく細かく彫らなあかんし、

    もっともっと小さくてすごい仕事してたひとも、知っている。

     

     

    このお地蔵さんを彫るようになったのは、15年ほど前。

    仕事として彫ることから一旦遠ざかっていた私が「もう1回」と新たに彫り始めて、

    「やっぱり仏さん彫ろう。・・何の仏さんがいいやろう?」

    と考えたときに出てきはったのがこのお地蔵さん。

     

    掌におさまるサイズのお地蔵さんがいい。

    そう思って決めたから、「小さくて彫るの大変」とは思わへんかったよなぁ。

     

    仏さんに限らず、今作っているもの、ほとんどが掌におさまるサイズ。

     

    握りしめたときの木の感触、それを大切に仕事をしている。

     

     

    私は父の仕事を見て育った。

    原木が四角く木取りされて、だんだん仏さんが出てきはって、

    仕上げの段階になると、手垢を付けへんように、白生地に包んで持って彫るようになる。

    その過程を、繰り返し繰り返し見ながら暮らしていた。

     

    父が席を外しているときに、

    「どれくらい仕上がってはるんやろ?」と、そっと布をめくって仏さんを見るのが好きやった。

     

    触ったらあかんようになっていかはる木、

    それとは別に、日常生活の中には父の彫ったものがあふれていた。

     

    ハンコや耳かき、母の髪留め。

    なくなった将棋の駒や折れた編み針は、父が代わりを彫っていた。

     

     

    おもちゃ箱に入っていたうさぎ。

    他のおもちゃとは明らかに異質なものやったけど、このうさぎと一緒にままごとをしてたし、

    私だけではなく兄姉もこのうさぎをおもちゃにして育ったという。

     

    ずっと手に残っているこの感触、記憶。

    だから「触れる仏さんが彫りたい」に行き着いた。

     

    彫り始めて何年か経ったとき、

    あるお客さまが

    「自分が死ぬときに、このお地蔵さまを握りしめて死にたい」と言ってくれはった。

     

    ちょっと距離のある、仰ぎ見て拝む仏さまやなくて、

    もっと身近な、自分だけの仏さまって思ってもらえるものを作りたいと思って彫り続けていたから、

    とても嬉しかったし、身の引き締まる思いがした。

     

    お地蔵さん、お守りで連れて歩いてくれてはる方もおられる。

    大切なひとの面影を重ねて持ってくれてはる方もたくさんおられる。

     

    今もそのひとと一緒にいるように感じてくれてはったら嬉しいし、

    どこにでも一緒に行ける・・というのは、小さいからこそ出来ることやと思う。

     

    他の仏師さんが、私の父みたいにいろんなものを彫ってはるのかどうかはわからへんけど、

    私が今、小さいもの、いろいろなものを彫るようになったのは、父の影響。

     

     

    小さいからこそ伝えられる木の魅力を、これからも伝えていけたらいいなと思う。

     

    誰かが想いを込めはるものを作る・・ということへの責任も忘れることなく、気持ち引き締めて。

     

     

     

     

     


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