あちこちで桜の開花宣言が出始めたけれど、北向きの仕事部屋はまだ寒くて、
暖房をつけながら仕事している。
刃物を研ぎ上げて
「さぁ仕上げるぞ!」
と思っても、握った刀が切れへんときがある。
2分から4分までの切り出し刀が10本くらい。
「あかん、切れへん」
と順番に取り替えて握って削って・・
全部が全部、納得いく切れ味のときはそうそうあるわけやないけれど、
全滅のときは思わずため息が出る。
自分でも気がつけへんくらいの不調が研ぎに出る。
難儀な仕事やなぁって思う。
「切れへん」って言うてもまったく切れへんわけやない。
ただ、作品の最終仕上げで求める切れ味は、十分やなくて十二分。
削った面が濡れたように光る、刃物が木に吸い付くような切れ味が私は欲しい。
気合い入れて研いだはずなのに、何でやろう?って考える。
考えながら、十分の切れ味で出来る工程の別の仕事に切り替えたりするときもある。
いろいろ考えながら、
試しながら、
また気持ちを整えていく。
そしてまた研いでみる。
「こんなもんでいいわ」っていう仕事は出来ないので。
たくさんいただいている注文の品を、順番に彫る日々が続いている。
今までは直接受けた注文は、その方のことを思い浮かべながら彫ってきた。
ただ、申し訳ないことに12月16日以降に受けた注文の方は、
ほとんどの方がお顔とお名前が一致しない。
それでも皆さん楽しみに待ってくれてはるやろうから、ひとつひとつ丁寧に仕上げていく。
逆にお顔が浮かぶのは、注文をお受け出来なかった方たちで・・
あまりの注文の数に対応しきれないと判断してオーダーストップをかけた後に、
ギャラリーにお越しいただいた方・・
私が彫っているものは
仏さんやったり、
アクセサリーでもお守り的な意味合いのあるものやったりするので、
必要とされる方の想いも深い。
だからお受け出来なかったことがとても悔しい。
あのときはもう限界やったから、お断りするしかなかった。
でも、
「私は生きている限り彫り続けるので、またお会いしましょうね」とお伝えした。
次は手にしていただきたい。
だから、気持ち整えて彫っていくしかない。
ひとつひとつみんな行き先が違って、
それぞれの方にとってたったひとつの存在になるもので。
私にとってはどの木もみんな大事で愛おしい存在やから、
最高の仕上がりで待っていてくれてはる人の所へ送り出してやりたいと思う。
今お受けしている分を送り出した後には、
次のご縁が待っている。
気持ちも身体も健やかに、
しっかり彫り続けていかへんと。
長時間座りっぱなしで膝が限界やったので、あぐらクッションをついに導入。
しっかり丁寧に仕上げていく。
どんなに仕事が忙しくなっても、
それはぶれたらあかんこと。
だから、
待っていてくださいね。