ただひたすら一生懸命に彫る
自分の纏う空気がピリピリしているなぁと思う。
今、香合仏を彫っている。
白生地で包まれた仏さまを手の中に
3厘や5厘の彫刻刀で
何日もかけて彫り進んでいく。
仏さまの仕事をしている間は、
何をやってても緊張している。
洗濯干してても、ご飯作ってても、
どこにいて何をしていても「今、仏さん彫ってるんや」ということが頭から抜けない。
常に緊張状態。
気持ちも身体も持たへんから、年に1、2体しかお作り出来ない。
私は父のように、
何百体もの仏さまを彫ってきたわけではない。
持っている技術力も、
父には到底かなわない。
いつもそう思っている。
でも、娘が言うてくれた。
「お母さんの仏さんが欲しいひとは、お母さんの仏さんやないとあかんのやで」
それは作り手としてとても幸せなことであり、とても苦しいことでもあると思う。
だからいつも、あがきながら、
今の自分に出来る精一杯のことをする。
研ぎも、彫りも。
もっと上手くなりたいよなぁと思いながら。
「一生勉強や」
父の言葉を思い出しながら、
苦しくて、でも楽しくて
なんとも言えない時間を過ごす。
待っていてくれてはる方が
その手の中でそっと蓋を開けはったときに、
微笑んでくれはるように、
そのお顔が見られるように、
願いながら、ただひたすらに。
- 2019.11.26 Tuesday
- 仕事
- 22:54
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- by けっち