この音と、生きていく

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     茗荷の花が、咲きました。

     

     

    苦手な外出が続いて、くたびれ果てて。

    ここ数日は仕事に集中。だんだん気持ちが落ち着いてきた。

     

    「ぱんぱんぱんっ」と木くずを叩いて、席を立つ。

    この音は、記憶の中の音といつも重なる。

     

     

    父は家で仕事をしていた。

    奥の仕事部屋から出てくる前に、いつもこの音が聞こえる。

    「お父ちゃん立ってきはる!」の合図の音。

     

    他にも木を削る音、削った木くずを吹き飛ばす音・・

    よく家に遊びに来ていた友人の記憶にも残っている音たち。

     

     

    もうずいぶん前になるけれど

    私が実家に行って荒彫りをしていたときに、母が

     

    「あぁ、懐かしいなぁ」

    と口に出したことがあった。

     

     

    いつも

    私達の日常に満ちていた音たち。

    母は、私の鑿打ちの音を聞きながら、どんな場面を思い出していたんやろう?

     

    他にも

    刃物を研ぐ音や、

    鋸を挽く音、

    鉋をかける音、

    いろんな音が耳に残って。

     

    今、私は記憶の中のその音に自分の音を重ねて。

    うまく重なる・・ということは、仕事が上手くいっているということで。

     

     

    仏さんとアクセサリーやねこは、刀の運びが違うので、音が重なることはない。

    私も仏さんを彫るときは、音が重なるときがある。

     

    そして今なら、思い出すだけで何を彫ってはったのかを感じとれる。

     

    あの音は、衣紋の曲線を彫ってはった音や。

    あの音は、阿弥陀さんの肩口を削ってはった音や。

     

    手元を見ていなくても、自分も彫るようになった今やからこそわかることがある。

     

     

    いつもいつも、

    丁寧に、

    一生懸命に、

    仕事してはったなぁ。

     

     

    母、兄、姉は、私の彫る音を聞いたとき、どんな場面を思い出すんやろう。

     

    母のお腹にいるときから、ずっと聞いていた父の音。

     

    他の家族が思い出にしてしまった音と

    私は今も、生きている。

     

     

     

     

     

     

     

     


    今年の蓮たち2・黄檗山萬福寺の蓮

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      今日は宇治の黄檗山萬福寺に、蓮を見に行って来た。

       

       

       

      三門入って左手に並べられた鉢たち。今までと違う位置に少し戸惑った。

       

      お寺さんのFacebookページで

      「コロナウイルスの影響を受け、鉢に入った蓮の維持が難しくなりました。

      今年で最後になるかも知れません」

      との投稿があり、驚いて会いに行った花たち。

       

       

       

       

       

       

      私が生まれ育ったのはこの近くで、このお寺さんは今も大好きな場所。

      日本三禅宗の一つ、黄檗宗の大本山であるお寺は独特の雰囲気で。

       

       

       

       

       

       

      小さい頃は、ここをぴょんぴょん歩くのが好きやったなぁ。

       

       

       

       

      立派な松の木たちも、大好き。

       

       

      本堂の中に入ると、いつも一気に時間が巻き戻される。

      十八羅漢さんの前に、小学生の自分といつもの仕事着姿の父が立っているような気がして。

       

      父はもうこの世にはいない。

      私もいずれ、いなくなる。

       

      でも、この空間はずっとこのままあり続けるんやろうなぁ。

      ・・あり続いていく世の中であってほしいなぁ、と、願う気持ちになる。

       

       

       

       

       

       

       

       

      雨が続いて、なかなか来られなかったけれど、やっと会えた花たち。

       

      「あの強い雨風にも折れたりしなかったんですよ」とお寺の方が教えてくれはった。

       

       

      あちこち蓮を見に行くけれど、ここは特にお気に入りの場所で、

      置いてある鉢も巨椋池系の品種も多く、もしかしたら貴重な蓮もあるんやないやろうか?

       

      もしも今年が最後になってしまうのなら、

      この蓮たちはどうなってしまうんやろう・・?

       

      一日に何度も見に行く、家のベランダの植物たち。

      仕事で張りつめた気持ちを癒やしてくれる存在やけど、

      このコらの生命は私にかかってるんやな、といつも思って接している。

       

      鉢植えの植物って、自生しているものよりも関わる人間に運命を左右されるものやから。

       

       

      いろんな事情があらはるんかも知れへんけれど

      萬福寺さんにこの蓮たちが咲いている景色はとても美しいと思うので、残念で仕方がない。

       

       

       

      どうか来年もこの景色が見られますように。

       

      見られないとしても、

      この蓮たちがどこかでまた花を咲かせられますように。

       

       

      「今月中くらいは咲いていますよ」とのことだったので、

      また会いに行こうと思う。

       

       

       

       

       

       

       

       


      今日も雨降り

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        蝶々みたいな花。 先日の宇治植物公園で。

         

         

        涼しくて仕事をするには楽でいいけど、蝉たちが心配で。

         

        「鳴き出したな〜」と思ったらこの雨と、気温の低さ。

        羽化も出来ずに、水溜まりで横たわっている姿を見ると悲しくなる。

         

        「なんでこのタイミングなん?」って。

        何年も土の中にいたんやから、あと数日待てへんのやろうか?

        身体の中の時計が「もう出て行く時間やで〜」って言うてしまうんやろうか?

         

        わからへんけど、仕方のないことなんやろうか。

        それがそのコの、運命なんやろうか。

         

        自分にも

        自分の周りにも、

        どうしようもない事ってたくさんあるなぁ。

         

        そんなこと考えると切なくなるけど、

        自分に出来ることを丁寧にこなしていくしかないもんなぁ。

         

         

        早く雨が上がりますように。

         

         

         

         

         


        今年の蓮たち

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          昨日、蓮を見に宇治市植物公園に行って来ました。

           

          降り続く雨、各地の被害・・気持ちが塞ぎますが、花は待ってくれません。

          今年は来年の作品展のためにも何ヶ所か見に行きたくて、

          普段はほとんど外出することがない私ですが、頑張って段取りつけて仕事しています。

           

           

           

          たくさん写真を撮るけれど、資料用の写真なので注目ポイントは花の開き具合が中心で。

           

          この花は、グルッと園内一周して戻って来たときにはもう散っていたような・・

           

           

          でも、純粋に「きれいやなぁ〜!」と思って撮る写真もありますよ。

           

           

           

           

           

           

           

          「綺麗やなぁ」と思うけど、「この色は表現出来ひんもんなぁ」ともいつも思うんですよねぇ。

           

          彫りたい花には出逢えなかったので、次に期待して。

           

           

           

           

           

           


          2020年も後半戦に突入

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            今年も半分終わりましたね。早いものです。

             

            ネタになるようなこともいろいろありましたが、書いてる時間がもったいなくて。

            ひと区切り付いたので久々に更新します。

             

             

            昨日は午後からお地蔵さんの木出しをしていました。

            割れを見極めながら、鋸を挽く作業です。

            真夏になると汗だくでつらい作業なので、夏の間の仕事分を用意してしまおうと。

            どこに何体入ってはるか見極めながら、1寸1分の高さ、5分5厘の角に切り出していきます。

             

            3月にギャラリーで受注した分はもう送り出して、

            その後のメール受注の分にかかっています。

             

             

            直接会ってお受けした分は

            そのとき一緒にお話ししたこととかを思い出しながら仕事をするのですが

            メール受注はお顔が見えないので、またちょっと違って。

             

            やり取りした文章を何度も読み返して、思い返して、お地蔵さんを彫り進めていきます。

             

            仏さまを必要とされる方は皆さんそれぞれに想いがあらはるから、

            出来るだけその想いに寄り添えるようにと、木と相談しながらの作業になります。

             

            注文の際にいろいろ伝えてくれはる方、

            受け取られた後に伝えてくれはる方、

            皆さんそれぞれですが、喜んでいただけると本当に嬉しいですし、安堵します。

             

            いつかお会い出来たらいいなぁと思います。

             

             

            これからもお地蔵さんの日々が続きます。

            調子崩さへんように気をつけて、順番に送り出していきたいです。

             

             

            先週、藤田芸香亭さんに納品に行って来ました。

            ねこ達、今なら表の飾り棚にも何匹か並んでいると思います。

            奈良へ行かれたら顔や体つきを見比べてやってください。

             

            お地蔵さんもねこも、

            みんなひとつひとつ違います。

             

            みんな誰かの大切な存在になってくれますように。

             

            そう願いながら、頑張ります。

             

             

             

             

             

             

             


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